会津東山温泉、雪の向瀧。有形文化財の客室に泊まり明治〜昭和へタイムスリップ[宿泊記]

東北旅の続き。

途中、上杉神社(上杉謙信)に参拝してから、今日の宿を目指しぐぐっと南下します。目指すは会津若松市。

仙台空港発着の3泊4日の旅には無謀な立地だったけど、今日の宿は大人気のためにこの日しか空きがなく(それでも奇跡の空室)。でも会津若松市も、ゼッタイ一度は訪れたかったところなので無理矢理プランにねじ込みました。

そして本日の宿は、会津東山温泉「向瀧(むかいたき)」。

登録有形文化財 向瀧

どのような旅館か?を端的に紹介するのなら「国の登録有形文化財制度が施行され、第一号物件登録されたのが向瀧」といえば想像がつきやすいかも!

旅館としても日本の登録第一号なのです。

歴史は古く、現在の向瀧になる前は「狐湯」という会津藩・上級武士の保養所として江戸時代からこの地にあるとか。会津藩の鶴ヶ城も近く、武家屋敷エリアからは歩いてすぐに向かえる立地をみると納得です。

上級用の施設のため、宮大工や名のある棟梁が加わり建築&増築された館内は、当時の素晴らしい技術や細工がちらばめられ、なかには現在では再現不可能な技術や材質もあるとか。

雪につつまれた姿は、ここだけタイムスリップしたような風景です。その雰囲気は実際に幕末〜昭和初期モノのロケ地としても有名です。

雪国 〜SNOW COUNTRY〜のロケ地

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった・・・」

最近では、2022年に川端康成の雪国がNHK BSのSPドラマとして制作された際、高橋一生演じる主人公が逗留した雪国の旅館は、向瀧でロケが組まれました。客室はもちろん、玄関や廊下など物語の多くが主人公が宿泊するシーンが占めてます。

昭和初期の雪国の旅館・・物語の世界を壊さないロケ地となったのも納得です。

たまたま再放送を見ていたら、最後に向瀧のクレジットが出てきたときはびっくり&納得のロケ地。もう一回じっくり最初から見返したいわ〜。

昭和文豪気分を味わえます。

木造建築部分、ほぼ文化財

玄関こそが、文化財第一号。

地元棟梁が大正時代の写真を参考に昭和初期に改築されたとか。あの東日本震災でも被害がでなかったというほどの立派で丈夫な作り。

飾ってあった昔の玄関写真、現在とほぼ変わらずっぷりがすごい。時代ものの大きく立派なねじまき時計も現役で、時間を知らせるチクタク音は、ノスタルジックなBGMとなっていました。

中に入ったら、昭和文豪の作品のなかに迷い込んだようなタイムスリップへどっぷり!

博物館でよく見かけるような、電話開通初期の電話機、現役で使えるっぽい。

開館時は会津藩上級武士の保養所として、戦後は進駐軍に接収されたのもあり当時高級品だったような時代物が良いコンディションで残っていました。

館内は想像以上にゆったりと広く、勝手に想像していた古い日本家屋にありがちな狭い廊下や低い天井とは全く違うものでした。空間はお屋敷とかお城に近いかも。

木材は古いけどしっかり手入れされていてピカピカ。廊下や階段で感じたのは、広い館内ほこりひとつ感じないお手入れのレベルの高さでした。地味に感動・・。

登録有形文化財の客室、菊の間

そして案内されたお部屋も登録有形文化財に認定されてる「菊の間」に宿泊です!

向瀧では比較的新しい昭和初期に増築された客室棟です。よりすぐりの会津の職人と宮大工も参加した昭和建築の技術が詰まっているのだそう。

客室に向かうのですが、ここは山の斜面に沿って斜めに建てられているから、いちばん奥にある菊の間までは階段をのぼらないといけません。体感的に3階くらい。

その階段も、こんな風情のあるものでした。冬なので石の部分はひんやりするんだけど、木部分は温もりがあって・・ヴィンテージならではの素敵な階段でした。

菊の間に到着。

なんと玄関の扉は昔ならがらの襖のまま!(鍵のシステムはあった・・ほっ)廊下から一段高いところに登るつくりです。前室のような和室と続きの間になっています。

向瀧でも、文化財としてさまざまな媒体で露出の高い菊の間。欄間が美しく有名です。冬なのでこたつでした〜。ありがたい。

そして、2面採光の障子を開けると・・雪景色の庭!白の世界に溶け込む欄間のシルエットも美しい・・

縁側は景色に囲まれた開放感のある特等席で、向瀧の中でも高台の位置なので、建物全体が見下ろせる絶好の場所でした。

ウェルカムドリンクは抹茶をたてていただきました。

ちなみに専用の洗面&トイレは縁側の右奥に新設されていました。水回りは新しい設備なのが、文化財の宿でも過ごしやすかったです。

冬の雪見ろうそく

雪のつもる時期は、ろうそくで中庭がライトアップされます。

中庭はなだらかな山の斜面、ちなみに泊まっている菊の間は一番奥の高いエリア。

夕暮れから、スタッフ数人で人力でひとつひとつ点火していました。

日暮れになると、とろうそくの火と雪の対比がとってもがキレイだった。まさに冬の花。地形を活かした建物群が不揃いなのが味がありました。吹雪いてない日で良かった♡

部屋のすぐそばまで明かりが照らされて、部屋でもライトアップを楽しめました。夜にゆらゆら儚い光を鑑賞するこの時間こそ、まさに昭和文豪の物語に紛れ込んだ錯覚が味わえる時間でした。